神戸市東灘区御影中町1丁目8-3
アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のⅠ型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、(水様性)鼻漏、鼻閉を3主徴とします。発作の反復により、重症化・遷延化・慢性化を来します。完全に治すことが難しい疾患です。したがって、長い付き合いになることが多いことから、自分の病気を良く知って、治療と予防にあたることが重要です。
なお病名として、鼻過敏症、鼻アレルギー、アレルギー性鼻炎、さらに花粉症などが用いられます。鼻過敏症は特異的および非特異的過敏性反応を示す疾患を意味し、包括する範囲が広いです。鼻アレルギーは鼻腔ばかりか副鼻腔のアレルギーを含み、アレルギー性鼻炎はよりやや広く、融通をもちしばしば書物のタイトルに使われています。アレルギー性鼻炎は論文で最も多く使われており、一般の方には最もなじみのある病名です。
抗原(アレルゲン)の種類によって分類します。
抗原がほぼ1年中存在するので、症状も強弱はありますが1年を通して自覚することが多いです。気管支喘息やアトピー性皮膚炎などに合併することがあります。
原因となる花粉の飛ぶ季節だけに症状があります。花粉症は花粉抗原による季節性アレルギー性鼻炎なので、鼻症状の他に眼の症状(かゆみ、涙、充血)を伴うことが多く(アレルギー性結膜炎を高頻度に合併)、喉のかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽいなどの症状が現れることがあります。
花粉症の患者さまで果物・野菜を食べた際、
口腔内に症状が出現する場合には、ご注意ください!
口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome:OAS)とは、食物の摂取の時に口腔・咽頭粘膜を中心に生じるIgE抗体伝達性即時型食物アレルギーです。一般的には野菜・果物と花粉との交差抗原性によって起こる症候群としてとらえられることが多いです。
OASは種々の花粉症患者さんに合併しますが、シラカンバ・ハンノキ花粉症で多く発症することが知られています。花粉症の種類によってOASの原因となる食物にも相違があります。
イネ科の花粉症ではトマト・メロン・スイカ・オレンジが多く、ヨモギ・ブタクサなどの花粉症ではメロン・スイカ・セロリが多いと報告されています。このように、リンゴ・モモなどのバラ科の果物のようにシラカンバ花粉症患者さんで高率にOASを起こすものがある一方で、メロン・スイカ・キウイのように種々の花粉症で比較的高頻度に原因食物となっていることもあります。スギ花粉症ではトマトによるOASの報告があります。
症状は食物摂取直後から始まります。口唇、舌、口蓋、咽頭、喉頭の急激な掻痒感、刺痛感、血管浮腫などで、通常これらの症状は次第に治まっていきます。まれに喉頭絞扼感や呼吸困難など重篤な症状を来す場合も報告されています。
治療は原因食物の摂取を避けることが基本ですが、加熱処理によって経口摂取が可能になる場合が多いとされています。経口抗ヒスタミン薬、内服ステロイド薬、まれに重篤な症状につながる場合もありますので、携帯用のアドレナリン注射キットを準備することもあります。
【2016年版 鼻アレルギー診療ガイドラインより】
【鼻アレルギー診療ガイドライン2016】より
日本全国の調査結果(1998年と2008年に全く同様の方法で調査)において、この10年間で比較してみると、通年性アレルギー性鼻炎、スギ花粉症ともに、かなり患者さんが増えています。
スギ花粉症は通年性アレルギー性鼻炎よりも有病率が高いことが示されており、スギ花粉症の増加が特徴的です。
【鼻アレルギー診療ガイドライン2016】より
通年性アレルギー性鼻炎は、10代・20代の若い人に多く、スギ花粉症は中年の人に多いことがわかります。アレルギー性鼻炎の中でも種類によって年齢に差があります。
鼻に入る抗原量を減らすことは、治療の第一歩で、患者さんにしかできないことです。
まず、鼻炎3大症状である「くしゃみ」「鼻みず」「鼻づまり」の中で、一番ひどい症状にあわせて薬の使い分けを行います。さらに1種類の薬で症状が抑えられない状態では同じ薬を倍にするのではなく、別の薬を組み合わせて使用します。
適応として、食物やペット、ソバガラ枕など抗原除去が可能な患者さんは対象としないことがほぼ一致した見解ですが、薬物療法無効例にのみ実施するべきか、有効例も含めるべきか議論があります。その目的は薬物療法と異なり、長期寛解にあります。患者さんの年齢、重症度の効果の関係、抗原の種類と精製法、投与ルートについても検討の余地が少なくありません。要するに、まだ治療法として一般的ではないようです。
皮下注射によるアレルゲン免疫療法ですが、慣習的な部分が多いです。
治療期間は3年以上とします。
2014年よりスギ花粉症に対し、2015年よりダニ通年性アレルギー性鼻炎に対し、保険適応になりました。局所の副作用は皮下免疫療法より多いですが、全身性の副作用は皮下免疫療法より少なく、安全性は高いとされています。
治療期間は約2年で、毎日欠かさず薬物投与を実施しなければならないので、患者さんにとっては非常に根気がいる治療法です。
飛散前から薬を飲みましょう!
初期療法とは、花粉が飛散する1~2週間前から薬を飲むことです。症状を軽くしたり、症状発現を遅らせたり、症状終了を早めたりする効果があります。結果的に薬の量や使用回数を減らすこともできます。
スギ花粉症の重症例では、軽症例に比べて症状が強いばかりではなく症状発現も早いです。過敏性の亢進が初観測日直後から、しかも高度に起こることが重症例であるので、花粉飛散量に加えて過敏性亢進も高度化する要因になります。一方、過敏性亢進が起こり難いのが軽症例です。したがって、重症例では初期療法の必要性は高いのです。
欧米では「アレルギー性鼻炎」患者さんの約3割(20~40%)に「気管支喘息」が合併していると言われています。またわが国でも「アレルギー性鼻炎」患者さんが「気管支喘息」を合併する頻度は、小児では15.3%、成人では7.1%と報告されています。
鼻を含む上気道から気管支を中心とする下気道は関連性を持ち、互いに影響しあうことから最近では「One airway, one disease」という概念が提唱されています。
「気管支喘息」が「アレルギー性鼻炎」に合併している場合、「気管支喘息」を同時に治療することにより「アレルギー性鼻炎」の状態もより良くすることができます。
「アレルギー性鼻炎」に罹患されている方の中で、日常生活で①「咳」がよくでる、②「息切れ」がする、「呼吸が苦しい」と感じる、③息を吐くときに胸やのどが「ぜいぜい」や「ひゅーひゅー」鳴るなどの症状を認める方は「気管支喘息」が疑われます。