肺炎とは気道を通して侵入した細菌やウイルスなどの病原体が肺内で増殖し、炎症が引き起こされた状態です。
肺炎はかかった場所などで「市中肺炎」と「院内肺炎」に大きく分けられます。
「市中肺炎」は自宅など日常の生活の中で発症した肺炎、「院内肺炎」は病院に入院後48時間以降に発症した肺炎を意味しますが、この項では「市中肺炎」について述べます。
肺炎とは気道を通して侵入した細菌やウイルスなどの病原体が肺内で増殖し、炎症が引き起こされた状態です。
肺炎はかかった場所などで「市中肺炎」と「院内肺炎」に大きく分けられます。
「市中肺炎」は自宅など日常の生活の中で発症した肺炎、「院内肺炎」は病院に入院後48時間以降に発症した肺炎を意味しますが、この項では「市中肺炎」について述べます。

症状は多彩ですが、発熱・咳・膿性痰(たん)*が主な症状です。肺から胸膜まで炎症が広がることにより胸痛が生じる場合もあります。
重症になると呼吸が困難になったり、意識が悪くなったりすることがあります。また病原体によっては、筋肉痛・腹痛・下痢といった一見肺炎とは関連がなさそうな症状が出たりします。
高齢者では典型的な症状が目立たず、食欲低下や全身倦怠感などが主な症状となったりする場合があるため注意が必要です。
2024年の人口動態統計(厚生労働省)では、肺炎が日本の死亡原因の第5位ですが、その要因は人口の高齢化による高齢者肺炎の増加と、これによる死亡者の増加と考えられています。
1位:悪性新生物(23.9%)
2位:心疾患(14.1%)
3位:老衰(12.9%)
4位:脳血管疾患(6.4%)
5位:肺炎(5.0%)
6位:誤嚥性肺炎(4.0%)
7位:不慮の事故(2.8%)
8位:新型コロナウイルス感染症(2.2%)
9位:腎不全(1.8%)
10位:アルツハイマー病(1.6%)
肺炎は抵抗力や免疫力の低下などが要因となり、基礎疾患の有無や加齢によってかかりやすくなります。また、基礎疾患があると肺炎のリスクが高くなります。

肺炎で亡くなる方のうち
65歳以上が占める割合1)
基礎疾患がある方は肺炎の罹患リスクが高くなります
健康な方と比べて、肺炎にかかるリスクは
がんで1.7倍、糖尿病は1.9倍、慢性肝疾患で2.1倍、慢性心疾患・慢性腎疾患で2.6倍、慢性肺疾患で5.2倍です2)。

1) 厚生労働省. 人口動態調査 2023年.
2) Imai K, et al.BMJ Open. 2018; 8(3): e018553.
市中肺炎の原因となる細菌の第1位は肺炎球菌です3)

3)Fujikura Y, et al. 2023;10(1):e001800.(一部改変)
肺炎球菌感染症のうち、髄液や血液など本来無菌である部位から肺炎球菌が検出された感染症のことで、髄膜炎、菌血症1)を伴う肺炎、敗血症2)などが特に問題とされており、小児および高齢者を中心に患者報告があります。

厚生労働科学研究費補助金 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業
「重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析、その診断・治療に関する研究」より作成
https://strep.umin.jp/pneumococcus/case_study.html(2025年6月10日アクセス)
肺炎の診断は、症状、身体所見、血液検査、胸部X線写真、胸部CTなどを総合して行います。
血液検査では体内で炎症を示す白血球やCRPの上昇を参考にします。
胸部X線写真や胸部CTでは、肺炎はスリガラス影や浸潤影と呼ばれる肺内の白い影として写ります。
細菌が原因と考えられれば抗菌薬を用いて治療します。ウイルスが原因であれば抗ウイルス剤を用いる場合もあります。
軽症で全身状態が良好なら、通院で内服薬を処方して治療します。
全身状態が不良な場合(脱水がある、食事が取れない、体内の酸素の数値が低い、意識が悪い、血圧が低い)で中等症・重症の肺炎が疑われる場合は入院加療する必要があります。
入院加療が必要となるのは免疫力が低下している高齢者に多く見られます。

高齢者ではインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が重要です。
インフルエンザワクチンが重要な理由は、インフルエンザ感染により、気道の粘膜が荒れて細菌などの病原体が侵入しやすい状態になり、肺炎を合併することがあるためです。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎の原因として頻度が高い肺炎球菌による肺炎を防ぐ効果が期待できます。
